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私はスタントウーマンを見ると、彼女たちそれぞれの「階段落ち」を見てみたいなぁ、と考える。
スタントウーマンたちが己の肉体ひとつで行うボディスタントこそ最良のスタントだと言うのは、以前書いた。そのボディスタントのスキルや、彼女たちの個性を測るのに打ってつけなのが、誰もが映画で一度は見たことのある「階段落ち」ではないかと思う。
ファイトシーンなどは、スタントウーマン自身による“能動的”なアクションだが、「階段落ち」はボディスタントの中でも“受動的”なアクションと言える。重力や遠心力、反射といった外からのファクターによって、彼女たちの体には様々なスピードや回転が加わることになり、これにどう反応するかという部分に彼女たちの個性が表れる。
と、言っても個性的な階段落ちが見られるのはハリウッドに代表される海外の映画などに限られてしまう、というのが実際のところだ。残念ながら、海外のスタントウーマンと日本のスタントウーマンの間にはやはりどうしてもスキルの差があることは否めない。
スキルというよりは、「発想の自由さ・柔軟さ」といった部分が大きいようにも思うが、その辺については別の機会に書こう。
ハリウッドのスタントウーマンがおこなう階段落ちはまさに十人十色で、見るたびに「そんな落ち方するか!こりゃ一本とられた」と唸ってしまう。上の写真は、このブログで紹介した
Sonja Munstermanによる階段落ち。スタートは階段に横になるようにして転がっていき、途中で体の向きが回転して段に腰かけたような状態になり、最後はお尻で滑るように落ちていくという芸当。しかも絶妙な“きりもみ回転”も加わっており、もはやアートの域に達している(笑)
このような複雑なものの他にも、豪快に顔や背中から落ちていくパターン、壁や手すりにゴツゴツとぶつかることで痛々しさを強調するパターンなども。さらには、二人で揉み合いながら落ちていくコンビ技(?)なども存在する。
しかし、どれも非常に痛そうだ。練習や経験を積んでいる彼女たちとは言え、落ちている最中に全てを計算できているとは思えないし、怖いだろう。薄いドレス1枚で、硬い階段を凄まじいスピードで転がり落ちていたりもするし、明らかに手すりに頭や腰なんかを強打しているような時もあったり。そんな危険の中へ文字通りその身を投じる彼女たちに、心から拍手を贈りたい。
無防備にただ転げ落ちているのではなく、ケガをしないためのセオリーみたいなものはスタントウーマンの中にあるのだろうけどね。それはどんなものなのか、想像しながら繰り返し見るのも「階段落ち」の楽しみのひとつ。
アクションの多様化をきわめた最新の映画においても「階段落ち」が描かれ続けていること、スタントの代名詞として「階段落ち」が、もはや不動の位置を築いていることはたいへん嬉しく思う。
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