ずっとハリウッド系のスタントウーマンを取り上げてきたが、ここでひとつ、日本のドラマからの記事を書いてみよう。
1995年にTBS系で放映されていた「未成年」という作品。脚本は、当時「高校教師」などで人気を博していた野島伸司が担当。野島作品は全体的に暗く、悲劇的なストーリーが多い。紹介するスタントシーンも、そんな雰囲気の中で展開される。
ここで登場するのが、いまや国民的シンガーとなった「浜崎あゆみ」だ。当時17歳で、まだミュージシャンとしてブレイクする数年前だね。
現在より地味で、むしろ老けてみえるような・・・。
第8話「真夜中の逃亡者」にて、浜崎あゆみ演じる「田畑瞳」が恋人の母親によって、階段から突き落とされるという場面がある。ここで浜崎に代わり、スタントウーマンが階段落ちをしているのだ。クレジットには残念ながらスタントウーマンの名前が無かった。「高橋レーシング」という表記だけは確認できたのだが、なんせ15年前の作品、誰であったのか特定するのは難しい・・・。が、体つきや身のこなしで間違いなく女性であることは分かる。
ハリウッドのスタントウーマンと比べると、迫力に欠ける感は否めない。階段に対して平行のまま転がっていくのでスピードも遅く単調だ。全身の姿勢を固定して、常に手のひらとヒザで接地しているので、ボテボテとした印象がある。上2枚目の写真6コマ&9コマ目で、転がる方向を調節するためにバランスを取る右手は女性らしく可愛いポイントだ。
石段につくしなやかで白い手や、一瞬のぞく痛そうな表情は魅力的だ。それと、ここで確認できるのが、手足にプロテクターを装着していること。
撮影の際に画面チェックもしていると思うが、ここまで気にしていないか、見えていてもこれぐらいはOKとされるのが日本のドラマの基準だろうか。こういうプロテクターが、かなりの確率で見切れていることが多い。まあ、アングル違いで最低2カット分はスタントを行っているだろうからもう一回、やり直させるのも酷と言えば酷だが。
私が監督なら、Sっ気を存分に発揮してもう1テイクやってもらうね(笑)「横向きじゃなく前転から入って、今の倍のスピードでラストは背中で滑れる?」などと顔色ひとつ変えずにオーダーして、スタントウーマンの困った顔を見てみたいものだ。
などと色々言いはしたものの、このスタントウーマンは色白で繊細な感じが良い。落ち方も女性らしい柔らかさがあり、これは日本人ならではの魅力かもしれない。これだけ長くて固い石の階段を落ちるというスタントも日本ではあまり無いしね。画面で見るより現場は怖いだろうし、彼女はかなり頑張ったと言えるだろう。
目が覚めるようなハリウッド系スタントウーマンの仕事を見たあとには、日本のスタントウーマンの醸し出す、“お味噌汁”的な安堵感も悪くない、かな?
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